最近のイチ押し ダメ出し / No.1092 / 2004.07公開 | |||
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最近のイチ押し ダメ出し 1092 -(1)↑NHKニュースの「ふざけた」テロップ風に 07月29日 民営化≠自由競争
・他の会社と競争してください。 参議院選挙を過ぎた頃から、郵政民営化の政府素案が新聞紙面を賑わっていますが、平たく言えば、先に列挙したことを実行すると言っているわけです。
過去に民営化が行なわれた旧国鉄、旧電電公社、旧専売公社はどうでしょうか。 一方、旧電電公社は国内はもとより、海外の電気通信市場の参入を目的に実施されましたが、携帯電話が浸透し、IP電話が一般家庭にも入ってきている現在でも、全国の電柱と電話線を握っているNTT一社の独占状態。旧専売公社においても製造原価が高い、そして外国タバコの参入を容易にするという理由でしたが、この19年でタバコが値下げしたという話を一切聞いたことがありませんし、タバコの独占販売は継続して行なわれている状態です。 すなわち、民営化されても本来の目的は未だ達成されず、その独占性を保持したまま現在に至っているわけです。確かに利用者、消費者の目に見えるところでは大きな変化を遂げてはいるのですが、見かけの部分だけ変わったように見せて、実は根本的には旧来の問題をいつまでもひきずっています。
JRを例にとれば、職員の対応は親切になり、きれいで涼しい電車に乗って通勤や旅行ができ、ICカードで雑貨まで買えるようになりました。しかし、地方路線は本数の削減、北海道、九州、四国は実質的な運賃値上げが行なわれています。 翻って、郵政事業民営化の本来の目的は何だったのかと思い返せば、
1.郵便事業が国家独占事業であり、民間企業の参入を阻んでいる。
だったと思われます。 「民間企業の参入を阻む旧郵政省の訳のわからない論理は小泉内閣では通用しない!」
と答えて、一気に旧郵政省を批判する先鞭を切ったわけですが、冷静に考えてみると、果たして他社の経営を圧迫させるほど郵便事業が儲かっている商売なのか、という疑問が起こります。
2.について、これを旧郵政省の責任に転嫁させようとしていますが、実際、お金を預けたのはわれわれです。230兆円近い預金量をあたかも「埋蔵金」のように報道している不見識なマスコミがたまにいますが、われわれ一人ひとりが預けた貯金に対してよくそういう言い方ができるなと唖然してしまいます。
われわれがあまたある金融機関や生命保険会社の中から郵便局を選んだのは選んだなりの理由があるからです。お国の保証があるから、全国どこでも引き出せるから、利息が少し高めだから、休日引出しの手数料がゼロだから、他に預けるところがないから…メリットがあるから預けたのです。 さらに、銀行をはじめとする金融機関は、郵便貯金や簡易保険のお金が放出されることで預け変えが進むことを狙っているわけですが、濡れ手で粟をつかむような考え方に思えてなりません。しかもこれらのお金は結局のところバブル時代の不良債権の穴埋めで使われることが目に見えています。
そして3.。本来変えなければならないのはこの部分です。小泉首相は就任時に「天下りの徹底的見直しをする」と言って、高い支持を得ました。天下りの温床となっている特殊法人を見直し、必要なものとそうでないものを吟味し、さらにお金の使い方を徹底的にチェックして無駄遣いをなくす…そのための「特殊法人改革」ではなかったのでしょうか。
「天下りが多い特殊法人が財政投融資を使って無駄遣いしているから、資金源である郵便貯金事業や簡易保険事業を縮小し、カネの入りを元からストップさせる」 4年前のちょうどこの頃、経営不振で給料も未払いにされた挙げ句、倒産してしまった会社に勤めていた私が「改革断行」のニュースに釘づけになり、ささやかな期待を寄せたものは一体何だったのでしょうか。 さまざまな疑問を残しつつ、この話題についてこれからも引き続き取り上げていきたいと思います。
関連ページ
→郵政民営化議論に水を差す(4)〜「こんな程度」の温度差〜
関連書籍紹介(Amazon経由)
→『郵政民営化論』 PHP研究所 1999
郵政事業に関するムダ知識
1.「保健所」は昔、簡易保険の健康相談所だった
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