My Trip/ 冬の東北ローカル線紀行-1 / 03.02開設 | |||||||||||||||||||
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1日だけの小さな旅から、数日がかりの旅まで、日記風に描く旅行記です。 はじめに
日本有数の豪雪地帯と奥羽山脈横断を繰り返しながら、移りゆく雪の風景と雪の街を見つめたいと思っています。
今回使った切符は、自宅最寄駅から、 1月24日(金)天気 晴れ→雪
浦和(7:39)→水上(9:40)→小出(11:30) 浦和から乗った特急「水上1号」のグリーン車は、高崎から先は貸切状態。週末のこの時期、好んで特急のグリーン車など乗る人はいない、ということがよく分かりました。誰も乗っていないと分かればこっちのもの。座席を向かい合わせにして足を伸ばします。 列車は新前橋から万座・鹿沢口行きの「草津1号」と分かれ、上越線を下っていきます。渋川を過ぎたころから雪がちらつきはじめ、突き上げるような固い乗り心地を覚えます。雪がレールの継ぎ目を埋めているためか、「ドドッ、ドドッ」というにぶいジョイント音がします。赤城山を右手に山道を登り、水上に着く頃には一面真っ白の世界。トンネルを抜けるまでもなく雪国の様相です。
水上から10分の待ち合わせで長岡行きの普通列車に乗り換えます。乗った車両はシートが更新されており、すわり心地は少し固めです。車内を見回すと、スキーウェアを着込んだ人がちらほら。 水上を出てから間もなく、新清水トンネルに進入。20分ほどで群馬県/新潟県境を抜けます。新潟県内に入り、雪はいよいよ激しく、粉砂糖をふるいにかけたかのように降り落ちていきます。駅のホームも、人が乗り降りする通路だけ雪かきがなされており、周囲は駅名標が埋もれるほどにうず高い、青白い塊で覆われています。 越後湯沢で20分ほど停車するため、列車を降り立ち買い物へ。中島みゆきの「地上の星」が空しくBGMに流れる、誰もいない駅構内の売店で「菊水」カップと亀田の柿の種を買い込みます。この「2点セット」をもって車内で昼間から雪見酒。列車の程よい暖房と揺れで心地よく酔います。思えば普通列車の中で酒を飲んだのは何年ぶりだろうか…。たまの贅沢をお許しください。 上越線では大きな駅ごとに除雪用モーターカーが待機していて、大雪に備えていつでも稼動できる状態にあります。列車が時刻どおり動いているのは、こうした備えがあるからなのだと納得。 小出11時30分到着。只見線の発車時間まで相当あるので、小出の街中を歩くことにします。相変わらず強い雪が横なぐりに降っています。車は走っているものの、人の姿はあまり見かけません。道路には融雪パイプが通っており、いくつもの小さい噴水ができあがっています。また、歩道はアーケードになっているため、東京のように雪の固まった道を歩いていてすっ転ぶ心配はありません。(→雪国の工夫)
小出町役場にたどり着き、しばし暖を取っていたら空腹を覚え、人が多く入っていそうな役場近所の喫茶店「てくたく」に立ち寄ります。12時35分、ポークランチ定食が運ばれてきましたが、のんびり食べているわけにもいかず、慌ててかっ食らいます。次の列車に乗り遅れたら夕方まで列車はありません。ソテーのソースの味を短時間で舌に記憶するのはなかなか困難です。 小出(13:12)→会津高田(16:40)
只見線をゆく
出発5分前に小出駅に到着。ぎりぎり間に合った感です。 また、この路線では大雪が降ると、ラッセル車やロータリー車と呼ばれる雪かき専用のディーゼル機関車に出動要請がかかり、線路に積もった雪、線路脇に積もった雪を取り除いていきます。沿線住民唯一の足を確保するために、深夜早朝を問わず雪と闘う姿がここにはあります。ちなみにこれらの除雪列車を「特殊排雪列車(特雪)」と呼んでいます。
列車は現在、勢いよく雪煙を上げて走っています。しかし速度はとてもゆっくりです。おそらく時速50キロも出していないと思われます。雪に備えてダイヤに余裕を持たせているためだと言われています。
14時30分、只見を過ぎると「会津XX」という駅名が増えてきて、福島県内に入ったことがよく分かります。列車は只見川にもつれながら走っています。薄い灰色をした雪の中にくすんだ深青色の只見川が凍ることなくとうとうと流れています。車窓に広がるのはモノトーンの風景。しかし、こうした風景をじっと見つめていると、白一色のように見えていた風景にも、さまざまな「色」があることに気づきます。 15時12分、会津川口到着。ここから車内の雰囲気ががらりと変わりました。学校帰りの高校生が大勢乗ってきました。車内はかつて嗅いだことのある匂いが漂っています。匂いの成分を分析すればこうなるでしょうか…。
ディーゼルカーの排気ガス そう、修学旅行のバスの中みたいな匂いです。嗅ぎ過ぎると列車にも関わらずバス酔いを思い出し、偏頭痛が疾(はし)ります。 しばし車内の高校生たちを観察。以前だと参考書を広げていた生徒を見かけましたが、最近はやはり携帯電話。ひたすら数字キーでメールを打っています。私のPHSは入広瀬から「圏外」が続いていますので、この山間部でつながるのはデジタル携帯電話だけのようです。
先ほどから気になっていたのですが、「便所使用知らせ灯」のランプがついたり消えたりしています。何人かの生徒が交代にトイレへ入っていきます。そう、車内で煙草を吸っている…。こっちは降りるまで吸いたい気分を押さえているというのに…。これもローカル線の一風景です。
16時24分、会津坂下到着。ホームにはさらなる高校生の大群が。全員乗ってくるのか? と思うが否や、いきなりホームから列車の窓を開けて荷物を放り込んでいる。座席を確保するためとはいえ、この光景は強烈です。
通勤電車並みの混雑の中、本日の下車駅、会津高田に迫っています。この混雑の中、本当に降りられるか…と思いながら荷物をまとめていると、リュックサックの置いてあった場所に一枚の紙片を見つけました。何だろうと思いながらめくってみると、思いもよらぬことが書いてあります。
本日の宿は「会津野YH」。昨年秋に改装したばかりでとてもウッディな内装になりました。同宿者は千葉からクルマで来たという会社員2人。アルツ磐梯スキー場で滑ったのち、このYHに泊まったのだといいます。
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